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スタンフォード大学の研究者、ウイルス様の新たな存在「オベリスク」を発見

スタンフォード大学の研究者たちが、人間の腸内細菌叢で「オベリスク(obelisks)」と呼ばれる新たなウイルス様の存在を発見。古代エジプトの方尖柱「オベリスク」に構造が似ていることにちなんで名付けれました。これらの構造は、腸内と口腔から見つかり、分析されたサンプルのかなりの割合で存在していることがわかっています。

一口メモ

腸内細菌叢は、元々は腸内フローラ (gut microflora)と呼ばれていました。細菌は、当初植物に属するとされていると考えられていたため、「花」を語源とした「flora (フローラ)」が用いられていたためです。その後、分類学の観点から、細菌は独立した生物であることが示されたことから、「flora」を細菌に対して用いるのではなく、代わりに腸内細菌叢(腸内菌叢)を意味する「gut microbiota」がという用語が用いられるようになりました。ただし、腸内フローラという表現は広く使用されており、一般的にも研究者にも浸透しているため、両方の表現が使われています。

新しいウイロイドの探索がオベリスクの発見につながった

当初、スタンフォード大学の研究者たちは、新しいウイロイドを探索していました。ウイロイドは、植物に感染して病気を引き起こすことで知られていましたが、近年は細菌や他の生物に感染する可能性があることも示唆されていたこともあり、新しいウイロイドを見つけるべく同大学のチームがRNA配列のデータベースを検索するためのツールを開発しました。

解析を進める中で、ウイロイドのように蛋白質の外殻はない一方で、ウイロイドにはないタンパク質のコーディングができることが判ったため、新たなクラスとして「オベリスク」と名付けられました。

ウイルス、ウイロイド、オベリスクの違い

  • ウイルス(Virus):ウイルスは、微細な感染性の存在であり、生物の生きた細胞内でのみ複製します。ウイルスはタンパク質の被膜で囲まれた遺伝物質(DNAまたはRNA)から成ります。ウイルスは動物、植物、細菌などさまざまな生物に感染し、さまざまな病気の原因となります。
  • ウイロイド(Viroids):ウイロイドは、植物に感染する小さな円状のRNA分子です。ウイルスとは異なり、蛋白質の外殻はなく、タンパク質のコーディングもしません。代わりに宿主の細胞機構を利用して複製します。ウイロイドは植物のさまざまな病気の原因となり、植物の成長抑制や葉の変形、収穫量の減少などを引き起こします。ウイロイドは、主に植物同士の接触や汚染された道具を介して伝播します。
  • オベリスク(Obelisks):今回発見されたオベリスクは、人間の腸内細菌叢に存在する可能性のある新しいウイルス様の存在の新たなクラスです。構造はある点でウイロイドに類似していますが、タンパク質のコーディングができることから独自のクラスとして区別されます。オベリスクは、腸内と口腔細菌から見つかり、比較的一般的とみられています。オベリスクの人間の健康への影響はまだ調査中ですが、その発見は私たちの体内にいる複雑な微生物群の理解において重要な進展を示しています。

腸内細菌叢の新たなフロンティア

腸内細菌叢は、腸内に存在する数兆もの微生物の集合体です。これらの微生物は、様々な種類の細菌、ウイルス、真菌などから成り、私たちの健康や疾患に影響を与える重要な役割を果たしています。

今回の研究はまだ査読前の状態で、プレプリントサーバーの『bioRxiv』で公開されました。未査読といえど、オベリスクという新たな存在の発見は衝撃を持って迎え入れられ、『Science』や『Nature』、『Scientific American』などでも取り上げられています。

オベリスクがどのように人体に影響を与えているかは更なる研究が待たれます。腸内細菌叢のバランスの乱れは、糖尿病、がん、気分障害などのさまざまな健康問題と関連していることもあり、今回の発見が腸内細菌叢と健康に関する新たなフロンティアを拓く可能性を秘めています。

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